インタビュー

仮想通貨の自主規制団体ができるまで

一般社団法人日本仮想通貨交換業協会

株式会社マネーパートナーズ代表取締役社長奥山 泰全 氏

撮影:マネーオール編集部

個人投資家として活躍、その後FX業界にて経営に携わり、FXを取り扱う業者としては他に例のない複数通貨をチャージ可能なプリペイドカードの発行など、常に独自の路線を進んできた奥山氏。現在は株式会社マネーパートナーズの代表取締役社長としてだけでなく、日本の仮想通貨業界をリードする存在として金融庁認定の自主規制団体日本仮想通貨交換業協会の会長へ就任した同氏に、仮想通貨の未来についてお話を伺いました。

一般社団法人日本仮想通貨交換業協会 会長
株式会社マネーパートナーズ 代表取締役社長
奥山 泰全 氏

1971年三重県津市生まれ。慶応大学商学部卒、マーケティング専攻。証券会社にてマーケティング・情報企画・IT戦略・コールセンター統括・経営企画・証券事業部長・ネット取引システム構築などを経て、2006年8月より株式会社マネーパートナーズ代表取締役社長に就任。赤字経営のマネーパートナーズを就任からわずか1年で上場させる。現在は株式会社マネーパートナーズグループの代表取締役を兼務。外国為替証拠金取引(FX)、証券取引をビジネスの基盤とする。個人投資家へのサービスの提供、および他金融機関への自社システムの提供やASPビジネスを展開。個人投資家時代に、投資で5億円を稼いだ「伝説の相場師」である。主な著書に「株式投資入門の入門」(東洋経済新報社)、「TOP TRADERS 2004」(共著 すばる社)、「お金がずっと増え続ける 投資のメソッドーアイドルのわたしでも。」(共著 PHP研究所)がある。

インベストコア株式会社 代表取締役社長CEO
伊藤 慎佐仁 氏

株式会社三菱銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)で為替資金部などに勤務後、ソフトバンク株式会社の財務部にて大型の資金調達などに従事。SBIホールディングス株式会社の取締役常務執行役員、ヤフーグループのワイジェイFX株式会社の代表取締役社長CEOなどを歴任。2016年には社会的インパクト投資を実践するネクストシフト株式会社を創業。インターネット金融の黎明期から関わり、銀行・証券・保険・住宅ローン・FX・投資助言業など幅広い金融事業に従事してきた。これまで、上場企業2社で代表取締役、上場企業3社で取締役。現在は、社会的インパクト投資やブロックチェーンなどフィンテックに幅広く関わっている。

「ビットコインをトレンドとして追い続けていた」

(伊藤)奥山さんは、もともとFX業界にいらっしゃって、かなり早いタイミングで仮想通貨業界にも参入されたと思いますが、その経緯を教えてください。

(奥山)2014年頃に、大手ベンチャーキャピタルの方から、「ビットコインを取扱うマウントゴックス社に出資しようか迷っている」とご相談をいただいたのがきっかけです。当時は、ビットコインについて見たことも聞いたこともなく、お話をうかがったところ、マウントゴックスはトレーディングカードを扱うフリーマーケットのようなサービスを提供する企業で、偶然仮想通貨を取り扱い始めたと聞き、なぜそのような企業に何百億円ものお金が集まって大きな取引がされているのか、それは大丈夫なのだろうか、と直ぐに感じました。

金商業者、とりわけFX会社であり証券会社としての目線で見ると、ビットコインの有無はともかく、そうした業者の管理体制は絶対何か問題があるのではと感じたので、「ビットコインがダメだとは言わないものの、その企業への出資はやめておいた方が良い」とアドバイスしました。

今でこそFinTechという言葉は、ファイナンス×テクノロジーという事で一般に知られていますが、ご存知のようにIT×証券、FX取引、それらのように金融をインターネットと掛け合わせることは、長い間金融で行ってきたことそのものではないですか。それこそ1998年にインターネットが本格的に始まってから、「これからはオンライン取引だ」というところにIT×金融の波が到来した訳です。

ただ、思い返せば1999年~2000年当時はオンラインの証券取引所もネット取引所もシステムトラブルが多く、FXも例外ではなかったです。そのような状況の中で、私はお客様にサービスを提供する金融機関の経営者として安全に安心してお取引をいただけるためにはどうしたらいいのだろうかという視点で悪戦苦闘しながら取り組んできました。その立場から述べるとFinTechという言葉は目新しくもなく、地続きだったのです。

結局私はマウントゴックスの件で相談を受けた後も、トレンドとしてビットコインを追い続けました。

業界団体設立のきっかけは、経済界の先輩方への講演

マウントゴックス事件の1ヶ月後くらいに、新聞社の編集の方から、経団連OB向けに仮想通貨の説明をしてくれと頼まれました。その講演の締めくくりにて、「マウンドゴックスは事件を起こしてしまったが、ビットコインはおそらくなくならない。必ずこれに類するブロックチェーン技術を当たり前のように用いる世の中が来るでしょう」と述べました。
その後、2016年からにデルコンピュータがビットコインでの決済に応じるという報道が出て、マイクロソフトが基本的にOSなどの容量課金を全てビットコインで支払えるようにする対応を見せ、さらにPayPalに至ってもビットコインでの決済をというような報道が続きました。そのような海外の雰囲気を追っていると特にIT業界を中心に決済手段の一つとしてビットコインを用いた支払の間口が開いていくような兆しがありました。

この状況をとても興味深いと感じ金融庁に、仮想通貨を扱うことについて問い合わせに伺ったところ、まだルールがないものをサービスとして追加するとなると社会的影響度がやっぱり大きすぎるので自重してくれ、と言われてしまいました。しかし、既に多くの取引がビットコインで行われていることからも、お客様のお金を預かるとなれば従来の金融機関でやらないといけないのではないか、という話をし続けていました。

その後仮想通貨を用いる業務への参入ではなく、検討することには全く問題がないと判明したタイミングで、アメリカのペイワード社(仮想通貨取引所Krakenを運営)に出資したこともあり、世間に対してマネーパートナーズが仮想通貨の業務提携に向けて検討を開始します、という発表をすることになりました。こう聞くと随分と簡単なように聞こえますが、当時の弊社社員数はグループ全体でも100名程しかいないという事情もあり、仮想通貨チームを作って動ける状況ではなかったのです。

しかしながらIRで発表を行った所、金商業者で仮想通貨の業務に関する発表は一番最初だったこともあり、業界からは、「仮想通貨ビジネスに参入するのですか?」という状況になり、他の会社から質問に来ていただけ、結果的に情報収集力が高くなる状況が生まれました。このような経緯でマネーパートナーズグループは、仮想通貨周りに関して情報のハブになれるような所まで辿り着くことができました。

仮想通貨ビジネス勉強会が、業界自主規制団体へ

奥山さんが代表となられている「日本仮想通貨交換業協会」の前身「日本仮想通貨事業者協会」の成り立ちについて教えてください。

もともと、金融関係者の周辺からのブロックチェーンといったテクノロジーの話だけではなく、仮想通貨の制度的問題や税制、レギュレーションの部分まで含めて勉強会を立ち上げないか、という話がきっかけで、2015年12月に、「仮想通貨ビジネス勉強会」が始まりました。

当初は、金融商品業者20数社での知見集約を皮切りにスタートしたのですが、翌年の4月以降社団法人として毎月勉強会を開催することに至り、その場に仮想通貨に興味を持った方が次々と集まるようになりました。なお現在では、約120社を超える企業に加盟いただいている団体になっておりますが、その真意はやはり金融機関を中心に、仮想通貨やブロックチェーンに関して「本当のところを知りたい」という声が非常に多いということだと感じています。

また当時、私たちの他にもブロックチェーンのことについて勉強を行う団体がありました。その中に旧価値記録事業者協会、現在の日本ブロックチェーン協会(JBA)がありました。
その後、改正資金決済法が可決され、認定自主規制団体が必要となる、となった流れの中で加盟企業の皆さんより、「この仮想通貨ビジネス勉強会が自主規制団体になってくれたら有難い」と仰っていただき、2017年6月27日に、仮想通貨交換業者を正会員、金融関係者その他を準会員以下と団体構成を切り替えた上で自主規制団体を目指すにあたり、名称を「日本仮想通貨事業者協会」に変更しました。

団体の垣根を乗り越え、登録事業者16社が一つに

2017年9月29日に金融庁が11社を正式に登録した日を皮切りに、2017年の12月1日に4社、12月26日に1社が仮想通貨交換業の登録を受けました。しかし以降、今日(※)に至るまで1つも登録はおりていません。

私は2017年6月29日に仮想通貨事業者協会の会長を与らせて頂いてから、終始一貫して言い続けていることがあります。それは、技術というものは日進月歩で進化していくものなので、あまり規制の傘の下に入れるべきではなく、イノベーションを阻害しない方が良いということです。しかし、仮想通貨のサービスを提供するという話になると、そこにはお客様の財産を預ったり売買をすることに繋がるので金融システムに近いものを提供することになる為、お客様に対して仮に現時点で法律が整っていなかったとしても、私はきちんと自主規制に取り組むべきとのスタンスでおります。事業者協会としても、まずお金回りのサービスに相当する所は自主規制団体化させて進んでいこう、という主張を展開し続けていました。

一方で、仮想通貨誕生の理念からいえば分からなくもないのですが、システム業者やブロックチェーン技術者、仮想通貨業者とそれぞれのベクトルが対等であるべきなのではないかという声も業界からは出ていました。しかしながらそのような状況下で2018年1月のコインチェック社の事件が起こってしまいました。

これにより業界内でも、「業界ルールは作らなくていいのか」、「自主規制はどう進捗しているのか」という話題がよりフォーカスされてきました。それでまず仮想通貨交換業の登録を受けた16社が集まって、認定自主規制団体を作る必要がある、という意思を示すことにしました。この後2018年2月20日に金融庁で合意を経て、同年3月1日に、全16社による共同署名が成立しました。この合意を受け2018年3月2日に団体として記者会見を実施し、名称を「日本仮想通貨交換業協会」へと変更し、現在は体制整備に取り組んでいる最中です。

インベストコア株式会社 代表取締役社長CEO
伊藤 慎佐仁 氏

株式会社三菱銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)で為替資金部などに勤務後、ソフトバンク株式会社の財務部にて大型の資金調達などに従事。SBIホールディングス株式会社の取締役常務執行役員、ヤフーグループのワイジェイFX株式会社の代表取締役社長CEOなどを歴任。2016年には社会的インパクト投資を実践するネクストシフト株式会社を創業。インターネット金融の黎明期から関わり、銀行・証券・保険・住宅ローン・FX・投資助言業など幅広い金融事業に従事してきた。これまで、上場企業2社で代表取締役、上場企業3社で取締役。現在は、社会的インパクト投資やブロックチェーンなどフィンテックに幅広く関わっている。

(※)取材日2018年秋口を指す。

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