インタビュー

ビットバンク株式会社 代表取締役CEO 廣末紀之さんに聞いた(Vol.3)

ビットバンク株式会社代表取締役CEO廣末 紀之 氏

撮影:マネーオール編集部

2017年の高騰もまだ記憶に新しい仮想通貨は、まだまだその投機的な側面しか世の中に認知されてきていない、というのが実際です。では、今日本のどんな人たちが、この仮想通貨の本質に気づき、生かそうとしているのでしょうか。いち早くこの可能性に気が付いたからこその第一人者、廣末さんにお話を伺いました。

ビットバンク株式会社 代表取締役CEO
廣末 紀之 氏

野村證券にてキャリアをスタートし、その後 インターネットに魅了されIT系スタートアップの立上げ、経営に長年携わる。GMOインターネット株式会社常務取締役、株式会社ガーラ代表取締役社長、コミューカ株式会社代表取締役社長などを歴任。2012年仮想通貨技術はマネーのインターネットになると確信し、2014年ビットバンク株式会社を創業。ビットバンク株式会社では、仮想通貨取引所以外にも、メディアによる情報発信、産業に従事する人材育成を目的とした教育事業などを手がける。一般社団法人日本仮想通貨事業者協会理事。

インベストコア株式会社 代表取締役社長CEO
伊藤 慎佐仁 氏

株式会社三菱銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)で為替資金部などに勤務後、ソフトバンク株式会社の財務部にて大型の資金調達などに従事。SBIホールディングス株式会社の取締役常務執行役員、ヤフーグループのワイジェイFX株式会社の代表取締役社長CEOなどを歴任。2016年には社会的インパクト投資を実践するネクストシフト株式会社を創業。インターネット金融の黎明期から関わり、銀行・証券・保険・住宅ローン・FX・投資助言業など幅広い金融事業に従事してきた。これまで、上場企業2社で代表取締役、上場企業3社で取締役。現在は、社会的インパクト投資やブロックチェーンなどフィンテックに幅広く関わっている。

「仮想通貨を扱うことの難しさ」

(伊藤)ところで、一方ではここ最近の口座開設のペースって、特に去年から今年にかけてはすごかったんじゃないですか?

廣末そうですね。去年は二つ山があって、一つが5月から。これは4月の仮想通貨法の施行があって、お客様が安心したのかわからないんですけど、5月くらいからグーンと増えて、それがずっと増えてたんですけど、10月くらいから二つ目の山がさらにどーんと。
これは相場が上がったからですね。お客さんも増えてペースがすごく上がって行った。でも最近はもうちょっと落ち着いていて、これはまあ相場が下がったから、ですね。

ビットバンク固有でいうとですね、コインチェック問題というのは、これは業界にとっては良くない話なんですけど、比較の中で、「ビットバンクはちゃんと仮想通貨の管理をちゃんとやってるよね」と評判になっていて、例えば今回のコインチェックの引き出しが再開された時に、退避先としてビットバンクに来ていただけています。

そうなんですね、やはりコインチェックの影響は大きいですね。
でもそれは、お客さんも分かってて、きちんとしてるところに流れていってるということですよね。

うちはもともと仮想通貨専業で、仮想通貨の管理は危ないということで非常に強く意識してたので、そこに関しては、もちろん外部攻撃に関してもそうなんですけど、内部対策に関しても、どういうオペーレーション上のミスが起こりうるかを検証してそれを全部プロセスとして潰してきたんですね。
仮想通貨を扱うにあたってはオンラインに一切触れさせないで、オペレーションをやってく方法論だとか、そういうところまでやってるので、結構マニアックなんです。

業界のスタンダードがないので、僕らも海外の失敗事例を研究して、自分たちでやって来たわけです。そこである程度公開できるところに関しては、我々はこういうことを、こういう考えでやってます、ということを公開してるんです。
こういう開示とかが、お客さまから信頼をいただいて、「あ、ビットバンクって鉄壁だね」となって、預けてくださっているケースがあるな、と思っていて。
セキュリティに関しては、仮想通貨は業界のスタンダードがないんですよ。

そうですよね。では逆に、どこまでやっていいのか、っていうのもないんじゃないですか?

各社が勝手にやってますね。我々がやってる方法論が正しいかどうかも分からないんです。

なるほど。我々メディアとしては、投資家さんがどこに口座を開くのが一番いいのかっていうのを、いろんな基準で判断していくための情報を頂きたいのですが、やはり昨今の問題からするとセキュリティとか内部管理の体制とか、そういうところは気になるところかな、と思います。
ビットバンクさんではその辺り、どういった対応をされていますか?

今回のコインチェックの話で、基本的にはコールドウォレットっていう形で完全にオフラインで管理をしてます。加えてバズワードで知ってるかもしれないですが、マルチシグにも対応しています。
これを例えでいうと、以前テレビでもお話ししたんですが、要するに地下の大金庫に仮想通貨を置いて、しかもその通貨をガチャッと開ける人、鍵を入れる人、指紋認証する人 何人かに分けて初めて仮想通貨を引き出す、と。
それもゲートにチェック機能があって1人では絶対開けられないし、そこの3人も一応結託できないようになっていて、かつ、その全員が全滅しても復旧できるようにくらいの対策はしてある。

リスクとしては、例えば、そういう鍵を持ってる人が出張に行って事故死します、とか、あるいは東京に核爆弾が落ちて全滅する、といった時に、お客様の資産が復旧できない、ということがあると困るので、そういう時にどういう風にする、というところまでオペレーションを決めていたりとか、かなり細かいシナリオ作ってやっています。

すごい!それは安心感ありますね。

ただ、やっぱり外部からの攻撃によるリスクと、内部のリスク、それから偶発的なリスクという幾つかリスクファクターがあるわけです。
もちろん完璧じゃないんですけど、考えうるものに関しては、一個一個オペレーションの規定を作って、それが起こったとしても大丈夫という体制をとっています。

それはかなりそこに投資してる、ということになりますよね。

そうですね。でもまあ投資といっても、何かすごくお金がかかるもの、というよりも、ちょっと定性的なオペレーティングのためのルールを作ったりだとか、一見無駄な動きみたいなところでコストがかかるわけです。
だから、オンライン上に、ドカンとウォレットを置いて、勝手にお客さんにやってくれ、っていうのが一番楽なんですけど、それは出来ないわけです。いろんな手続きを何人かでやって、それが時間や労力や脳みそを使ったりとかする、そういう意味の「コスト」ですね。

これは今までの仮想通貨の取引所が何度も事故を起こしているので、なぜ起こったのかを原因研究し、その原因に対する対処を一個一個やっていって今に至る、という感じなんです。

つまり、システムでできるものと、人の手でできるものと両方やっているということなんですね。

やったとしてもキリがなくて、今99.9%大丈夫と思ってますけど、これを99.92にするために同じくらいのコストがかかるんです。
これが99.99%になるまで、やり続けるしかないんでしょうけど。

そういった部分の専門家は社内にいらっしゃるんですか?

そうですね。もともと仮想通貨の専門家というか、2012年ぐらいからずっとそういう業界にいる人を集めてきました。加えてブロックチェーン大学校というものをやってるぐらいなので、先生がミスしてどうするんだと。笑

そうですよね。笑
ちなみに、ブロックチェーン大学校とは、どういうことをやられてるんですか?

エンジニア向けと非エンジニア向けのコースがあって、非エンジニア向けは、プログラミングについての概論が理解できる内容になっています。エンジニア向けというのはどちらかといったらプログラマー向けのコースになっていて、そこでは、コードの詳細だとか構成とかそういうことまで、かなり突っ込んでやっています。なので、ゴールとしては社内のブロックチェーンプロジェクトが立ち上がった時にプロジェクトにアサインしても大丈夫、というレベルの育成をやっています。

大学で教えつつ、かつその研究もしている、ということですか。

そうですね。まあ、研究は昔からずっとやってるんですけどね。その意味では、マウントゴックスの件もそうですが、大体、問題が起こるパターンはすでに研究テーマとしては出ていました。

研究とはいっても、今回のコインチェックなどは、簡単に言ってしまえば、コンビニATMに500億置いていた、とも言えることで、これは一般常識的にはあり得ない話ですよね。事件は気の毒ではありますけど、こういった「人の行うこと」に関しては防ぎようのないことにも思えます。

それは、僕も怖くて毎日ビクビクうなされながら生きてます、本当に。なくなった夢とか。無くなって記者会見でお前なんだ、と詰められてる夢を見たり。でも、これって普通だと思うんですよ。

お金をお預かりしてますもんね。でも、仮想通貨の取引所としての競争力という意味では、管理体制についてはビットバンクさんの特徴の一つということですよね。

そうですね。そこは以前から追求をしていて、やっぱりあの取引所のビジネスの本質というのは取引がスムーズにできるというのはまず一点なんですけど、それ以上に仮想通貨をきちんとお預かりする、というところがなければ、そもそも成り立たない。特に専門性を要するのは後者の方なんです。FXでも株でも、フロントのマッチングシステムはいろんなものがある。ところが仮想通貨の管理というのは、ちゃんとやれる人は極めて少ないのです。

となると、今回みたいに悪意を持った引き出しは、株とかFXに比べて、元々の性質としてより容易だと思うんですよね。でも、そのセキュリティは従来のものよりは弱い。だからリスクは倍になってるわけですよね?

そうです。今後もやっぱりこういう事故っていうのは 多かれ少なかれ起こるだろうし、僕らが「スタンダードがわからない」と言ってるぐらいなので、金融庁も分からないんですよ。仮想通貨交換業の登録といっても、本当にそれでオーケー出していいのかどうかも実際のところは分からないんです。
ここが本当に難しいところです。

【第4回】のインタビューはこちら

【第5回】のインタビューはこちら

【第6回】のインタビューはこちら

【第7回】のインタビューはこちら

【第1回】のインタビューはこちら

【第2回】のインタビューはこちら

Recommend あわせて読みたい