インタビュー

実需取引拡大のためのSwap市場の創設を目指す

FXcoin株式会社代表取締役社長大西 知生 氏

撮影:マネーオール編集部

2019年12月に、暗号資産交換業への新規参入業者として新たに登録された「FXcoin株式会社」。外国為替など金融の現場で長年にわたって培われたノウハウを活かし、独自のサービスを展開されようとしています。今回のインタビューでは、代表取締役社長の大西知生氏に、これまでの経緯や自社の特長、暗号資産業界における今後の展望まで、様々なお話を伺いました。

FXcoin株式会社 代表取締役社長
大西 知生 氏

慶應義塾⼤学経済学部卒業後、東京銀⾏へ入行(本部、フランクフルト支店)、その後ドレスナー銀⾏、JP モルガン銀⾏、モルガンスタンレー証券、ドイツ銀⾏グループを経て、2018 年1⽉より現職。2017年まで東京外国為替市場委員会副議⻑、同Code of Conduct ⼩委員会委員⻑に従事。 「J-MONEY」誌において2017 年テクニカル分析ディーラー・ランキング第1位を獲得する。著書に「FX 取引の王道 − 外貨資産運⽤のセオリー」(⽇本経済新聞出版社)がある。経済学博士。

外国為替から暗号資産へ その理由

マネーオール編集部暗号資産交換業への新規参入業者として登録されたとのこと、おめでとうございます。ここ暫く色々な事件・事故の影響もあり難しい状況であったと思いますが、FXcoinとして暗号資産事業への参入を検討されたのはいつ頃ですか?

(大西)どうもありがとうございます。
事業の検討を始めたのは、当時日本では仮想通貨元年と言われ、改正資金決済法が施行になった2017年の前半くらいです。

マネーオール編集部暗号資産事業参入の検討を始めたきっかけについて教えてください。

(大西)私は1990年に当時の外国為替専門銀行の東京銀行に入り、30年弱、外国為替の仕事に携わってきました。検討を始めた当時はドイツ銀行グループに勤めており、12年在籍していたんですけども、最後の10年くらいはドイツ銀行の仕事をしながら「外国為替市場の健全な発展と拡大」を意識していました。

具体的な活動としては、私自身が東京外国為替市場委員会の副議長という立場で、外国為替のルールづくりをする「コード・オブ・コンダクト委員会」の委員長も兼務していました。2015年に東京外国為替市場のルールブックともいわれた「外国為替ガイドライン」を作り、世界の外国為替市場委員会でも英訳されて発表されました。これを受けて世界の中央銀行および当局者の集まりであるBIS(Bank for International Settlements:国際決済銀行)が、同様のガイドラインをつくることになりました。そこから2年かけて世界の外国為替市場委員会が協力し、私も色々関わりながら、2017年5月に「グローバル外為行動規範(FX Global Code)」という形で完成、公表されました。これは BISのホームページで見られます。

ちょうど同時期の2017年6月にそれまでのキャリアの集大成ともいえる本も出版し、自分自身、外国為替の仕事では一区切りついた感じが非常に強かったところで暗号資産に出会い、テクノロジーやブロックチェーンなどにすごく将来性と発展性を感じたことで事業参入を考え始めました。

海外金融メディアでも取り上げられた「Mr.FX Japanの暗号資産業界参入」

マネーオール編集部FX業界や投資家の間で、大西さんが“Mr. FX Japan”と呼ばれていたのは有名な話ですね。
その大西さんが暗号資産業界に参入されたことは、ブルームバーグなどの金融系のニュースメディアでも取り上げられました。

(大西)ブルームバーグ、時事通信と色々当時は取り上げられましたね。ブルームバーグの動画ニュースは海外での反響が大きかったですね。

マネーオール編集部実際に暗号資産事業に参入された経緯を教えてください。

(大西)2017年当時は仮想通貨元年と呼ばれており、ビットコインだけではなくアルトコインと呼ばれるそれ以外の通貨も何十倍、何百倍と上昇するものもありました。そのころは先行している交換業者がスマホで簡単に取引できるアプリを提供し、市場参加者の裾野が20代、30代の若者に広がっていました。日本は国をあげて「貯蓄から資産形成へ」と投資を促しているにもかかわらず、それがなかなか進んでなかったのですが、使いやすいツール(今回の場合は暗号資産取引アプリなど)を提供すると自然に投資家も増えるのだと感心した記憶があります。2017年に法律が施行されてから1年足らずの間に、暗号資産というものを一気に広げた既存業者のアイデアと努力には大いに刺激を受けました。

ただし、業界全体でみると、まだ黎明期であるため色々なことが決まっていなくて、まだこれからと感じていました。その中で、私が外国為替の世界でやってきたルールや組織づくりは、日本の暗号資産業界において役に立つのではないかと思いました。「大西さんが暗号資産業界に来てくれると助かるのに」と言ってくれる人たちも結構いて、その気になって行動した、ということもあります。(笑)

私は欧州中央銀行やイングランド銀行、ほかにも幾つかのアジアの中央銀行に呼ばれて、市場ルールづくりのノウハウやFX取引についての説明をした経験を重ねていました。それを生かして、日本の暗号資産業界もFXと同じようにしっかりとしたルールを作って、世界のお手本になって広めていけるのではないか、それが出来るのは自分ではないか、という様に考えました。

暗号資産交換業を高い規律をもって運営することは、最初から決めていました。

マネーオール編集部日本の暗号資産業界では、ブロックチェーンの技術側から参入した取引所もいくつかあります。FX coinはそれとは違い、暗号資産を金融商品として捉え参入したのですか?

(大西)はいそうです。

マネーオール編集部2017年後半に暗号資産の価格が急激に高騰し、流出事件が起こった2018年当初は、事業戦略などを色々考えられていた時期だと思いますが、参入を決意されてから軌道修正などはありましたか?

(大西)ほとんどありませんでした。
改正資金決済法に基づく日本の暗号資産交換業者は、金融商品取引法(金商法)に従っている既存の金融機関よりも規制が緩やかだと言われていました。当社には国内外の大手金融機関および通貨当局から人材が集まっており、金商法のレベルで運営することを最初から決めていました。事件があったからと言って方向転換して厳しく作り直さなきゃいけない、という事はありませんでした。

金融市場での豊富な経験を活かした、FXcoinのサービス展開

マネーオール編集部登録されたところだとは思いますが、最初はどういったサービスを展開される予定なのでしょうか?例えば取り扱う通貨の種類や、提供するプロダクトなどを教えて頂けますか? また営業開始はいつごろになりますか?

(大西)まずは現物の暗号資産、ビットコイン(BTC)のみの取引でスタートする予定です。お客様に不都合をかけずスムーズ取引できることが確認できれば、その後リップル(XRP)など流動性の高い通貨を徐々に増やしていく予定です。その後は金商法に基づくいわゆる暗号資産デリバティブ取引(証拠金取引)も行いたいと考えています。
また、暗号資産交換業を発展させてスワップ市場を創設し、暗号資産の実需取引拡大につなげることを目指しています。
暗号資産交換業者としての営業開始は現時点では正式決定していませんが、来年の早いうちに開始できればと考えています。

暗号資産取引における「安全性と利便性のバランス」

マネーオール編集部FX coinで安全性において重視されていることについて、これまでおきた流出事件との関連で可能な範囲で教えてください。

(大西)わが国の暗号資産業界ではこれまで何回かの流出事件がありました。ここから分かることは2点あると考えています。
1点目は、認定自主規制団体である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が定めたルールが機能している、ということです。協会はガイドラインとして利用者から預託を受けた暗号資産におけるホットウォレットでの保有比率を一定水準以下とすることを定めています。今年に発生した流出事件においては会員である交換業者がそのルールを遵守していたため、これまでの事件で見られたような大きな流出額とはなりませんでした。もちろんハッキングなどによる流出事件はあってはならないことですが、ルールが機能していたことによって被害額を小さくできたという見方もあると思います。
2点目は、ルールがあっても、セキュリティに費用を大きく割いたとしても安全性に”絶対“ということはないということです。当社もウォレットの管理だけではなくシステム全般のセキュリティには大きな費用をかけており、運用面でも暗号資産の移動オペレーションには様々な工夫をしています。それでもウォレットがネットワークとつながっている以上は絶対的な安全というものはないという考え方をとっています。したがって、お客様から預かった暗号資産はコールドウォレットを中心として保管していくこととしました。この結果、お客様からの指示による暗号資産出金は指示をいただいた翌日に実行することになります。

マネーオール編集部コールドウォレットに入れておくと利便性が損なわれる、という議論についてはどう考えられていますか?

(大西)安全性と利便性のバランスということが非常に大事だと言われています。しかし、金融機関としてどちらが大事かと言えば安全性です。安全性あっての利便性だということは疑う余地がありません。利便性やお客様のニーズを軽視して安全性に走ると、企業として競争力を失うと言われることもあります。今のご質問もそういう背景があると思うんですけど、我々は違った考え方を持っています。

暗号資産取引を行っている知人などにヒアリングした結果、「すぐ送金できなきゃ困る」といった利便性を望んでいる人はほとんどいませんでした。実際外部に暗号資産を頻繁に送金する人は多くはないですし、色々聞いてみると、やはりハッキングなどで資産が失われること、またそれにともなって取引ができなくなることが大きな心配だったんです。
つまり、預かった暗号資産は(たとえ出金に時間がかかることになっても)安全性の高いコールドウォレットで保管することが、お客様のニーズに合っているというわけです。

社名の由来と、企業ロゴに隠された想い

マネーオール編集部「FXcoin」という社名やロゴは特徴的ですが、込められている思いなどがあれば教えて頂けますか?

(大西)FXという言葉はもともとForeign Exchangeつまり外国為替を示す言葉です。私自身がMr.FX Japanと呼ばれていたこともあるのですが、それ以上に今のメンバーの多くが、外国為替または海外取引業務に携わってきた、もしくは(外国為替専門銀行だった)東京銀行の出身者であることから、社名をFXcoinとしました。

マネーオール編集部なるほど、素晴らしいですね。その“FX”と“coin”を組み合わせた形ですね。
貴社のロゴもインパクトがありますが、そちらはいかがですか?

(大西)そうですね、ロゴデザインは宮師雄一さんです。この方は色々有名なCI(Corporate Identity)やグラフィックデザインを担当されています。分かりやすいものでいうと表参道ヒルズのロゴや、レクサス10周年記念のイメージデザイン、安室奈美恵さんのCDなどのデザインをされています。
このデザインは宮師さんと何回もミーティングをして我々のコンセプト等を十分理解していただいて制作していただきました。
ブランドカラーは、ブルーをベースカラーとし、差し色にグリーンを活用した構成となっています。明るいブルーは果てしない透明性、我々はやはり金融機関出身の人間として、透明性とか情報開示は非常に大事にしておりますので、その中でそれを象徴する明るいブルーを使いました。右肩上がりの明るいグリーンは進化や新しい会社としての成長性を表現したものです。FXcoinの文字の横にあるロゴタイプはブロックチェーンで世界につながるネットワークを表しておりその中心にFXがあります。

【第2回】のインタビューはこちら

Recommend あわせて読みたい